目的のない図像

昨日読んだシンポジウムレポートで「無機的な」つまり特定の意図の産物でない 画像というふうに Google Streetview を位置づける議論があったのだが、伝統的には制作物はつねになんらかの意図によって作りだされたものとされ、特定の使用目的へ向かって作られていないというのは美的制作物(要するに芸術)のひとつの徴表でもあった。Google Streetview の映像を私はおよそ美しいとは感じず芸術とも思っていないのだが*1、しかしその作り出すシュミラークルとしての現実世界の像が、それ自体は撮影によって記録し公表するという以上の特定の目的を持たないということにも反対しない。Google Streetview もまた表現のための表現の一形態なのだ。

19世紀末「芸術のための芸術」l'art pour l'art という審美主義といわれる運動がイギリスなどにあって、それは背徳的と当時叩かれることもあったのだが、それはなんらか不道徳的なことがいわれたからということを越えて、道徳や信仰といった、表現にとっては外的な目的をもたない、純粋に表現のための表現を標榜することがそれ自体不品行であり逸脱だという反発であったように理解している。Google Streetview への反発と不安のなかには、プライバシーへの懸念等々と並び、「目的がなんだかわからない」しかし量的には膨大な画像群についての漠然とした不安もあるのかなとふと思った。

*1:あれを素材にした芸術作品/インスタレーションは可能だろうけどまた別の問題

ラドラーを家で作ってみる

これまでのお話

さて昨日は祭日で2週間続いた斎が明けた。せっかくお祝いなので晩酌をつけることにして、前から気になっていた「自作ラドラー」に挑戦してみた。ラドラー(Radler)とはビールとレモネードを混ぜたビアカクテルで、ドイツ語版ウィキペディアの Radler の項によれば、割合はビール6:レモネード4だそうである(英語版の相当する項目 Shandy には「6:4または5:5」とあった)。英語版には「ラガー・ビールで」という注釈もあった。

サントリーのモルツとC.C.レモンを使ってみる(ちょっと手抜き)。ドイツ語で Zitronenlimonade というのは炭酸の入っていないレモネードのことなので、スプライトとかは使わない。おかげで出来上がったのはだいぶ黄色が濃い感じのになった。ミュンヘンで飲んでたのとだいぶ感じが違う(あれはもっと淡い色合いだった)。6:4では自分には強すぎるので5:5にしたのだが、それでもだいぶ強い感じがした。ラドラーってこんなに強かったかな? あるいは Shandy *1の市販のものがそうであるというように*2のように、ごく薄いものを出していたのだろうか。それとも自分がひさびさに飲むものだから、それでたんに強く感じたのだろうか。いまのところ謎である。

先日見つけたラドラー通販サイトでは330mlが500円という馬鹿高い値がついていたが、もう少しまっとうな値段のサイトが見つかった。

クラウスターラー(びん入り)
2007年DLGアワード金賞受賞
容量:330ml
税込 179円
(本体170円)

クラウスターラー(缶入)  
容量:330ml
税込 158円
(本体150円)
 
麦芽とホップのみを使用し、ビールと同じ製法で造られたドイツNo.1※の販売数を誇るプレミアム ビール テイスト飲料です。
(※AC Nielsen調べ)

クラウスターラー - 片岡物産

通販のラインアップは

  • 缶2ケース48本 6,300円
  • 缶1ケース(24本)3,780円
  • 瓶4本「お試しセット」714円
  • 瓶1ケース(24本) 4,284円

消費税込・送料別・手数料込の値段である。これならなんとか手がでそうだし、レモネードに市販のものを使う限りは自作ともそれほど値段は違わない。アルコール分 0.4%以下とあるので Shandy に近い割合かもしれない。販売元ではノンアルコール飲料として扱っていた*3。アウグスティーナーのラドラーはなんだかとても軽かった*4ので、ひょっとしてクラウスターラー同様、ビールの割合がそれほど高くないのかもしれない。

ともあれ、まだまだ暑い日が続く中、瓶4本セットを買うか、それとももうしばらく自作修行を続けるか思案している。

*1:イギリス等での相当する飲み物

*2:英語版ウィキペディアによると1:10

*3:……ここではじめて、もうひとつ見たサイトのあのちんひょろすぽーんなお値段は、彼我の酒税の違いにも起因するのではないかという疑惑が生じる。が、まあいいや。

*4:私はフランツィスカーナーも好きなのだが――ミュンヘンオペラ座の前にビアホールがあって腹ごしらえ兼開演前の時間つぶしにときどき立ち寄った――、フランツィスカーナーのルッセというこれは白ビールを使ったラドラーはアウグスティーナーとくらべるとどっしりしていて、ときどき余すことがあった

ドイツ人の国民的教養としてのアルプスの少女ハイジ

今の子供たちにとって、アニメやゲームを作るのが日本人だというのは、もはや周知の事実だったのである。ドイツ人の(特に子供の)日本に対する認識は、ここ20年ほどで劇的に変わったのだそうだ。

ただ、それを今の大人たち(40代以上)は、やっぱり知らされてなかった。だから、彼らは、自分たちの子供が日本についてそんなに詳しいということにもまた、驚かされたのである。

そうして彼らは、「アルプスの少女ハイジ」が実は日本人が作っていたのだということを知ってまず驚き、次に、子供たちがそれを当たり前のように知っていたことで再びびっくりさせられたのである。

ドイツ人の女の子から聞いた笑い話 - ハックルベリーに会いに行く

ネタだと思っている人もブクマコメントをみるといるようなのだが、たいてのドイツ人がアルプスのハイジを知っているのは事実である。日本は正直ドイツではあんまり知られていないので、『アルプスの少女ハイジ』はドイツ人がまんべんなく持っている数少ない日本についての知識だといってもいいくらいだ。

  • ミュンヘンの下宿の大家のおばちゃん(当時50代)は、「日本」という話題にあまり持ちネタがなく、彼女の少ないもちネタが「ハイジみたことあるよ」「しょっちゅう再放送してるよ」だった。
  • そして次の週、日曜日の朝、新聞を広げると、そこにはたしかに Heidi とあり、わたしはZDF(ドイツの公共放送のひとつ)でドイツ語版のハイジをみたのであった。なおOPとEDがどんなだったかは覚えていないはドイツ在住であるid:kmiuraさんによると共にドイツ語の全然違う歌がついているとのこと。
  • つい先日まで、日本学を学びに留学していた若い友人がいたのだが、彼と話をしたときに出た話題のひとつがやはり『ハイジ』だった。日本アニメだということはわりと最初から知っていて、というよりそういうことがあいまって日本文化に関心をもったのだという。
  • ドイツ人の若い子が「日本文化に関心をもっている」といったら、それはほとんどアニメが好きということである。それは最近いろんな国でそうなのだが、そこで「むかしハイジみた」というドイツ人は多い。

アニメはどうも彼らから日本文化の粋であると思われていて(映画に対する尊敬の度合いということもあるかもしれない)、なので日本の最初期のアニメはディズニーの影響を受けつつ、それに追いつこうとして出発したなんていうことをいえば、いかにディズニーアニメがハリウッド的で商業的論理に満ちていて作家性に乏しく、つまり日本アニメと比べてあんなのはスカであり「おまえはアニメが分かってない」と説教が始まるのがオチである。ドイツ人には議論が下手なわりに一度理屈をこねだすと止まらなくなるのが一定数いるので、最近は初めからからそういう地雷は踏まないことにしている。

なおハイジはスイスでも放送しているらしく、彼らにとっては作品の内容もさることながら、舞台がスイスであるということがこよなく大事らしい。とくにスイスよいとこドイツすかなとこというのがあの話でははっきりしているので、彼らの愛郷心をえらい刺激するらしい*1 。スイスのアニオタと会話すると「スイスはミヤザキのアニメの舞台になってるんだze」というような訳のわからない自慢話を聞かされることがある。

一日一チベットリンクダライ・ラマ、「体調不良」訴えインドで入院=病院 ロイター]、2008年 08月 29日 09:48 JST。9月はじめに予定されていた外国訪問2つを含む当面3週間のすべての予定がキャンセルされている。これに伴い、以前紹介した8月30日の12時間断食、当初ダライ・ラマも参加する予定だったのだが、これもキャンセルしたという。断食キャンペーン自体は行われる。日本では東京の護国寺と広島の龍蔵院デプン・ゴマン学堂日本別院で法要ないし祈祷会があるという。

しかしロイターより産経(28日0:43の記事)が1日以上早いというのは興味深いです。

*1:一部のスイス人にとって「ドイツ」というのは地雷であり、「ドイツ語」のつもりで German などといおうものなら German language といえとか、政治的に正しい指摘が来ることはままある。そしてそれはナチに直接踏まれた世代だけでなく、いま10代20代の人でもそうなのである。