配偶者がうつ病になったときにするべき、たった一つのこと

配偶者がうつ病になったときにあなたがする、たった一つのこと、それは病院へ行くこと。病院へいって担当医とあうこと。

配偶者の主治医を訊いておいて、その医師を指定して面会予約を取る。もし不明でも、受付で「○○の配偶者です。○○の治療計画について担当の先生にお話を伺いたい」といえば、向こうでよしなにするだろう。

患者の家族と主治医の面談は治療行為の一環であり、健康保険の対象になる。なので初診料も込みで1500円前後を用意しておけばよい。患者本人の勘定に付き、再診扱いとなる。コメント欄には初診なら2000円から3000円ではないかという指摘あり――id:aoahcwさんの場合はいかがでしたか?)。時間は面会に30分、診療前待ち時間に15分くらいを最低はみておきたい。余裕があれば、少しはやめにいって、配偶者の通っている病院の雰囲気をみておきたいが、無理にする必要はない。面談が終わったあとや次回以降でも十分構わないとは思う。

過去に書いたエントリから再録する。

わたしは夫の死に関してひとついまでも激しく悔やんでいることがある。夫の生前に主治医と面談しておかなかったことである。夫はわたしには打ち明けていた希死念慮を主治医には明かさなかった。もう死にたいとはいわないと誓った9月の約束をある意味愚直にも守って誰にもいわなかったのだ。そうして彼はふたたび死にたいと口にせぬまま死の顎にみずからを渡すことを選んだ。主治医が夫の希死念慮について私の口から聞いたときの蒼白な表情はいまも忘れられない。医者にはいえて家族にいえないことがあるように、家族にはいえて医者にいえないこともあるのだと、わたしはそのとき初めて知った。これを読んでる方が、精神科に通院しているご家族をお持ちなら、わたしの轍を踏まれないことを祈る。

「死にたい」 - 鰤端末鉄野菜 Brittys Wake

うつ病の場合、家族に病名を告げない場合も多いと聞いた。社会的活動能力が低下し、それにつれて社会的評価も下がることが多く、そのことを嫌がって家族にも打ち上げないのだという。すでに配偶者がうつ病であることを知っているということは、配偶者がそれだけあなたに心を開いているということだ。現状がどんなにやり場のないものだとしても、その信頼を小さな希望にして、とはいえまずあなた自身を支えてほしい。二人で倒れたら、どうにもならない。わたしも夫がうつ病だったから、患者の家族がおかれるストレスというのは、理解できる。

配偶者の闘病生活が長ければ長い分、あなた自身も相応に疲れていて、しかもいま手元にある情報は、限られているのだということは覚えておいてほしい。主治医に会って、治療にあたっているもうひとりの当事者の意見を聴いて――何か行動を起こすにしても、そのあとでも遅くないだろう。

ネットに溢れている親切めいた(いや実際親切なんだろう)さまざまな助言や忠告は放っておいてよい、私は断言するが、そんなものは何の役にも立たない。彼らはあなたを知らないし、あなたの配偶者も知らない。ちなみに医師が診察せずに病名を診断し治療法を指図すればそれは医師法違反である。ネットに溢れている忠告なんて、その違法のアドバイス以下のものだということは心に留めておいてよい。世の中には出来ることと出来ないことがある。患者の治療ということは、ネットで出来ないことに属すだろうと私は個人的に思っている。

だから、あなたの配偶者がうつ病であったなら、あなたが病院へ行きなさい。主治医と話をしなさい。治療方針に疑問があるなら、なおさらそうしなさい。

そうして、主治医と話をするのは配偶者であるあなたにしか出来ないことでもある。第三者として、当事者二人と対等に、同じ情報を見たうえで話が出来る、患者の配偶者というのはそれが可能なほとんど唯一の人間だ*1。まだ何か患者にしてやりたいという気持ちがあなたの心に残っているのなら――まず病院へいきなさい。あなた自身が。

Inspired by:

追記:
1月5日の夕方までにいただいたコメント・トラックバック等に対してお返事を書いた。わたしが重要だと思ったご指摘のピックアップや正誤訂正などもしているので併せてお読みいただければ幸いです。

余裕のある方は本エントリへの他のトラックバックへも眼を通されるとよりよいかと思う。

*1:まだ患者が結婚していなければ両親等がそれに当たる。