エジプトの女性専用席・三題

id:sumita-mさん経由で図書館の女性専用席という話題があることを知る。イスラーム世界みたようだな、と一瞬思いかけ、いや待てよと記憶をたぐってみる。

カイロの地下鉄。前のほう二両が女性専用席になっていた(母親等と一緒の男性児童はOKのようである)。始発からほぼ終日女性専用だが、終電に近い遅い時刻になると男女共用になるようであった。めんどくさいことになるのがいやで(ある程度配慮したとはいえ、私の服装はエジ女子よりはカジュアルにみえるだろう)、私はずっと女性専用車両を使っていたが、男女共用車両に乗っているお女中もちらほらいるようであった。

アレクサンドリアの市電。三両編成の一両が女性専用だった。こちらは乗っていないこともあり、詳しいことは知らない。

そして他では女性専用席というのは見なかった気がした。長距離列車には男女の席の別はなく、女性はそもそもあまりいないとしても、レストランやカフェに男女席の別はなかった。そうそう、私は入らなかったが、モスクは必ず内部で男女別に別れているそうである。ただし所と種族によってはそもそもモスクですら女性が外出してくることがないそうなので、そういうところ――たとえばシナイ半島のあるガソリンスタンドのモスク――では女性用トイレや女性用祈祷部屋もまた存在しないのだった。

エジプトで訪れた図書館はアレクサンドリアの図書館のみである。国立の大きい奴で閲覧席は世界最大1万以上あるらしい。その広大な図書館は、エジプト国民はたしか無料かあまり高くない額、外国人は有料で500円くらい払うのだが、男女で席が分かれているようにはみえなかった(私が読めないだけで掲示があったのかもしれないが、座っている人のばらつきからはそうはみえなかった)。

図書館の前の通りには、ところどころに乞食がいて、若いイギリスの友人の話によると彼らはどこかに家があるというわけではなくそこで毎晩寝ているらしかった(つまりホームレス)。彼らが図書館に入ってくるという話はきかない。あるいは警備員が入らせないのか、見えない壁があるのかは知らない。

あとで帰ってきてから、その乞食がいた話をしていた友人はエジプトの諸設備への不満をメーリングリストで書き綴り、ついで「街路で人が寝ているようなところに連れてこられてぼくは気が狂いそうだった」というようなことをいって、来年のウィキマニア2009の実行委員長であるアルゼンチン人に「それが貧困というものです。残念なことですがそれは社会全体の問題でカンファレンス実行委員会が非難されるようなものではありません。実際、参加者の快適さのために彼らの存在を隠蔽することがあれば、そのほうがもっと恥ずかしいことです。アルゼンチンにもホームレスはいますが、ぼくらはそれを隠すつもりはありません。第三世界へようこそ」とユーモア交じりに切り替えされていた。

私はあとで「ロンドンにだってホームレスはいるだろうになにあれ」と毒づき、インド人の友人に「彼は若くて世間が狭いんだよ。ぼくはそんなに気にしていないから。実際乞食がいることは誇るようなことじゃないしね。ともかく『北』の人間がリアルな『南』を見るのはいいことだよ」となだめられた。

ラノベ備忘録・2008年8月編。

以下ネタばれも含むに付き^L が使えないってほんとに不便だね。


















  • 『お釈迦様も見てる 紅か白か』 スピンオフ。中篇×2。片方は『コバルト』初出のときに読んだ。増補があるらしいが見ていない。もう片方の中篇は新キャラクター。正直私にはどこが魅力なのか分からないキャラクターだ。雑誌でみたときも思ったんだが、どういう層がターゲットなんだろう? わたしはもちろん男子校を知らないがマリみて以上にリアリティが感じられない。といって腐女子が喜びそうな感じでもない。エロスがないんだな。烏帽子名の設定は70年代の少女マンガのソロリティ風設定を思い出す(やたらよくわからない綽名が主要キャラクターについているというもの)。ギャグと華と狂言回しの女教師の足りない『アラミス’78』といったところ。
  • 神曲奏界ポリフォニカ ジェラス・クリムゾン』 これまでで一番分厚くてしかも前後編の前。この1巻だけで500枚あるそうだ。短編集や他並行作品の設定をうまく取り入れていて、そういうところは手堅い。設定過多かなというのはずっと気になっていたが、RPGがFEARから出ていた*1。そういう需要があるということか。キャラのお約束漫才は私には鼻につくが、シリーズものだとある程度そういうものも必要なんだろうか。ここ数巻は作者のキャラいじりがすごい気がするんですが、棄てプリの頃から兆しはあったか……。この人、女酒乱書くのがたんに好きで、だからといって説得力のある女酒乱の描写を書く力量がないだけなのかも。
  • レンタルマギカ 魔法使いの妹』。中篇4本。手堅い。いつもと違って外国語の使い方などにあからさまな間違いがないので、その意味でも気持ちよく読めた。主人公が派手にバトってないので平和な感じですが、いままでの伏線が回収されたり新たな伏線(ていうか釣り?)が張られてたりしているので、シリーズ追っている人は読まざるをえないかも。なんでこのタイトルなんだろうと思ったが、4本のうち3本は確かにそういう話、巻頭もそのテーマだといえなくもない。題詠ならぬ題ラノベといったところ? 主人公が拾われ子というのは掲示板などで話は聞いていたが、ほんとに一瞬出てくるだけなんだな*2。思わせぶりな文がときどき地の文に混じるが、シリーズ完結が近いのか単なる引きなのかドラゴンボールよろしく無限遠にのびていくのかは不明。ところで表紙のアディは縦ロールじゃない気がしますが気のせいでしょうか。
  • グイン・サーガ』122巻? 無惨の一言。主要人物のはずが突然人格破綻者のように酷い描かれ方をされ、かなりの頻度で性的倒錯が付いてきて*3、延々繰言をいうだけのキャラクターになるというのが50巻前後からのパターンで、それはもう馴れていて、ていうか作者が気に入らないキャラなんだな*4というので苦笑しつつみていたのだが、最近の数巻ではそれまで作者のお気に入り*5だったはずのキャラクター(e.g.マリウスやリンダ)まで、このパターンに嵌まっていくのはどういうことだろう。この新刊での犠牲者はハゾス・アンタイオス。いや、まあ、ここしばらくの数巻でもすでに十分ハゾスは何この女衒だったわけだが、この巻ではさらに卑小さが増しており、ああもう私が好きだったキャラクターでまともな人はスカール様だけになってしまったのかと悲しかった。グインがシルヴィアを夢の中で切ったうんぬんというのはあったようななかったような気がするなあ、と思っていたら90巻あたりの話らしい。伏線回収にしても放置しすぎだと感じた。こういうことを再度説明しておくために地の文というのはあるのではないだろうか。

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*1:リプレイも出ていた。ってマスターは当方不勉強にて存じ上げぬなり。プレイヤーは鈴吹太郎さんなどいてちょっと豪華。

*2:あとで伏線回収するだろうけど。

*3:私が原理主義異性愛者だということをまったく度外視しても、それなりに長く出てきたキャラクターが作中世界で白眼視されている性的指向の持ち主だということが、ストーリーの展開に大きく寄与するでもなく以前の伏線もなく突然持ち出されるというのは、なんかおかしくないか?

*4:ということが透けて見えるというのはフィクションとしてどうなんだと思うが、それはまた別の話。

*5:ということが透けて見えるというのはフィクションとしてどうなんだと思うが、それはまた別の話。