愛民は煩はさる

1999年の日本シリーズの解説、忘れていましたが、こういうやりとりがあったようにも思います。もちろん私の記憶力など、あまり当てにはならないのですが。ただ森さんだけじゃなくて川上おじいちゃん*1も敬体で喋る方だったような覚えがあります。違うかな。

川上氏 「これは日本シリーズと言う事を忘れてはいけない。短期決戦で負けは許されない。私なら交代と言った時、交代していた」

      短期決戦の日本シリーズは総力戦。臨戦態勢で勝たなければならない。次の試合に勝つ保証はない。

      選手の出し惜しみを一番してはいけないのが短期決戦の常だ。」

森氏  「・・・・・(川上監督、凄すぎ)・・・・自分は、まだまだです・・・・・・・・」

川上氏 「森君、情が一番要らないんだよ・・・特に日本シリーズではね。」

1999年の日本シリーズのラジオ中継 - はてな匿名ダイアリー

「情が一番要らない」怖ろしい言葉ですが、勝利ということだけを考えるなら、そうなのでしょう。孫子の一節が思い出されます。

故將有五危,必死可殺,必生可虜,忿速可侮,廉潔可辱,愛民可煩。凡此五者,將之過也,用兵之災也.*2

『孫子兵法』「行軍第九」 - ウィキソース中国語版]

愛民は煩はさる。民すなわち兵を愛すればそのことゆえに労苦が増す、これを過つは用兵の災いである、と孫子はいいます。もちろんこの言は彼の想定した軍隊が農民を徴募し、したがってあまり訓練のいきとどいた軍ではないという*3歴史的制約にもおそらくは由来するのですが、しかし根幹にある思想はいまでも全く的外れというものではないようにも思います。

*1:とうちでは呼んでいた。

*2:句読点がピリオドとコンマなのは参照したサイトで現代中国語正書法を採用しているため。

*3:兵はここでは消耗ユニットとして考えられているように見える。