いまツイッタードラマが熱い

ツイッタードラマというと日本語圏内では某TVドラマを指すようですが、そうではなくて、Twitterの上で展開されるドラマの話。

Such Tweet Sorrow
http://www.suchtweetsorrow.com/

id:nofrillさんが紹介されていて知ったのですが、これが無類に面白いです。てまあシェイクスピアだから(つうかロミジュリですね*1)、そしてロイヤル・シェイクスピア・カンパニーだから、当然っちゃ当然ですが。

Such Tweet Sorrow は『ロミオとジュリエット』のツイッター版なのですが、大胆な翻案が行われています。舞台は原作のヴェローナから現代のイギリスにおきかえ、登場人物はみなイギリス人になっている。なのでツイートはみな英語でかかれます。ロンドンマラソンなどの実際の出来事とリンクさせたり、乳母を姉にしたり(Jess Capulet @Jess_Nurse)、ロレンス修道士が地元のインターネットカフェ兼本屋の経営者になったり(Laurence Friar @FriarLaurence)*2と、設定を現代向きにアレンジした上で、登場人物もある程度絞って話の輪郭がすっきりと浮かび上がるようになっている。

演出の眼目はいろいろあるんでしょうが、ライブ性が極めて大事にされているように思います。リアルタイム性とインタラクティブ性の両方を追求し、そしてある程度までは成功しているように感じました。

まず、リアルタイム性ですが、おそらく Such Tweet Sorrow は Romeo & Juliet のタイムラインを極めて忠実に展開しているとおもわれる。つまり脚本の上で一時間かかる出来事があれば、それは Such Tweet Sorrow のなかで一時間を消費する、そして夜おこったことは夜に、昼おこることは昼におこる。そういう演出なんではないかと思います。極めてリアルタイムに事態が進行していきます。ロミジュリの展開をリアルタイムに傍観するのは舞台の上の圧縮された時間で観るのとは別の体験で、極めて面白い。ことに登場人物の、そして自分の感情の動きが、時間のなかで引き伸ばされたり濃縮されたりする感覚は舞台とは違ってリアルタイムだからみえてくる部分もあって興味深く感じます。

次にインタラクティブ性。Twitterなので観客がキャストにリプライをとばして、からむこともできます。はげましたり、からかったり。キャストがそうした観客のツイートをリツイートしたり、リプライで反論したりということも起きます。ジュリエット(@julietcap16)がロミオ(@romeo_mo)と出あったあとはしゃいでいたところ、誰かが「画像あげて!」とリプライするというシーンもありました。id:nofrill さんは Jess に RT されたらしいです。いいなあ。

タグとしては作中人物が使うもののほか、感想用に #suchtweet が使われています。日本語の感想は #suchtweet_jp に書かれています。

Such Tweet Sorrow 現在の展開は、サッカーの試合から乱闘になりマーキュシオ(@mercuteio)は行方不明*3、ティボルト(@Tybalt_Cap)が死に(これは警察に父キャプレット*4が遺体を確認にいったのでほぼ確定)、ロミオは行方不明、ジュリエットはもだえ、ロレンスが大丈夫だからとジェス(原作の乳母)をなだめている、ここまで来ています。原作ではこれからいよいよ裁判・逃亡・すれ違いと急展開を迎えるのですが、そういったおおまかな展開は知っていても、ひょっとして原作とは何か違うことが起こるのでは、という期待もさせつつ、Such Tweet Sorrow から眼が離せません。

*1:Such Tweet Sorrow というのは Romeo and Juliet, Act 2, scene 2 の "Parting is such sweet sorrow" のパロディとおもわれる。

*2:「修道士」を意味する Friar が surname だというアレンジをしているようだ。

*3:原作ではティボルトに殺される。

*4:原作ではティボルトはジュリエットの母方のいとこだが、Such Tweet Sorrow では兄という設定。なおジュリエットの母親も STS では継母だという設定になっている。おそらく Jess が母親的役割を果たしていることをより自然にみせようとの意図ではないだろうか。