星を見る

払暁というにはまだ早い、十一月の四時。眼が覚めてしまったので、服を厚く着込んで深夜の公園に来てみると、先客がいて姿は見えないが話し声がしている。

一部に雲が厚く出ていて、オリオン座のあたりから東へと空の四半分を覆っている。深夜とはいえ人家のある辺り、公園の灯りもだいぶ落としたとはいえまだ残っている。それでもこの季節、目が慣れて来ると親しんだ星が見えてくる。リゲル、ベテルギウスアークトゥルスがだいぶ高い。輻射点をきちんと調べておけばよかったなと思いつつ、黄道に沿ってだいたい見当をつけていく。

しし座流星群

2001年の大出現を2人でみたのだった。このときも特にそれを見ようとは思わないで、ただ私は夜更かしをしたのでふとそのことを思い出し南向きの窓を開けてみれば、暗い空に流れる星がよくみえたのだった。家の脇は山裾で人家がないことも、観測条件をすこし良くしていたのかもしれない。もうだいぶ寒くなっていて、あんまり開けては寝ている人が風邪を引くかなと最初は遠慮がちにしていたのが、結局は窓を開け放してしまったのだった。

あの人が眠っていることはわかっていたが、不眠を無理に薬でまぎらかしていることを知りつつ、長年天体観測を趣味にしてこの大出現にも心惹かれていたことにも気づいていた身としては、呼んで、起こさずにはいられなかった。

それでも起き出てはこなかったところ、大きな火球があがっていった。覚えず声が出た。外の冷気もだいぶ入ってきてさすがに悪いかなと思い、窓を閉めて戻ってきたところ、あの人と眼があった。
「火球が流れたんだよ」
「うん」
「いまの、みた?」
「うん」
「起こしちゃったね。ごめんね」
「ううん。起こしてくれて、ありがとうね」
その柔らかな声音を、いまでも覚えている。それが、あの人と星を見た、最後になった。