春にして君と別れ

すこし寝起きが悪く、ようやく起き出て朝のルーティーンをすませると、8時半になっていた。
あの日なのだ、と気が付いたのは正午のニュースになってからだった。

私が蒙った被害はせいぜい魚焼き網くらいだったので、あの朝のことをむしろ懐かしく思い出す。何かあったときに、自分をまず最初に案じてくれるひとがいた幸福を思う。

あの年、周囲では多くの人が結婚し、そして私はよそ事として聞いたのだが、多くの人が別れた……らしい。明日が不確実なとき、生涯を決してともにはしないだろう人とともにいることをあえて選ぶ人は、おそらく少ないのだ。