骨休め

している場合ではないのですが。絶不調で思考がまとまらない。
ウィキペディアに久々に記事を書いてみました。こんなに量を書く必要はなかったのですが、頭がうにょうにょしているときに何も考えずに長文を書くと、すこしすっきりする(待て)。というわけで自動筆記したのが、「使徒継承」。識者が正しい情報を盛り込んでくれることを期待しているのですが、いまのところ、どうもそうはならないようである。うむむむ。

少し迂遠なのですが、これもベーメつながりです。

マルテンセンを読んでいると、彼そのものではなくて注釈者の人がときどき意味の取りにくいことをいいます。「カトリック信仰」(Cはなぜか大文字)……で、普通C大文字はローマだよな、著者ルター派なんですが。ともにょる。なかでもよくわかんなかったのが、M先生、一度スウェーデン国教会(ルター派です)から主教として招聘を受けたのですが、これを諸般の事情で断った。そこに注釈者は「使徒継承教会の主教になる機会を自ら断った」というようなことを書くのですね。

 使徒継承?

ここで頭がうにゃーっとして、それでそのときはさまつなことなのでほうっておいたのですが、だんだんに気になってきた。というのはM先生の書くことが、また時々微妙なのであります。どうも彼個人の立場としては地獄の実在性を否定(いるんだこういう人、どうも19世紀末から20世紀初めというのは地獄の実在性を否定するのがはやっていたらしい。こういうところは不可知論で通したほうが人間幸せだと思うのですが……)していて「この点でベーメルター派の伝統的な教説の枠から出ていないことは残念なことである」とかさらっと書くんですよね。デンマーク首座主教なんだけど。

なのでM先生の立ち位置をもちょっとまじめに確認しておきたいとおもって、そこのところを少しWikipediaで(RGG手元にないんだもん)調べてみると、北欧のルター派教会は使徒継承教会を自称している、ということがわかってきました。なるほど、使徒継承教会を主張するなら、信仰が普遍的だとか、ひとつの教会とか、まあいいたくもなるわな。……ほんとにそうなのかは知りませんが*1、なので、東方正教会にあった赤リンク解消がてら、メモを作っておきました。*2
ルター自身は司祭のときにカトリックを離れて、なので彼が按手したルター派の牧師たちは使徒継承もくそもないわけですが、ルター派に教会ごと転んだ北欧の教会では、そこには司祭も司教もいたわけですな。で、使徒継承を主張してみる、とどうもそういうことらしいです。日本のルター派は、西日本は北欧から入っているのですが、彼らが使徒継承を主張しているかどうかは知りません。……ってこれを書いていたら、前に覗きに行ったルター派教会のノルウェー人の牧師は「ノルウェー教会は使徒継承なんです」といっていたような気もしてきた……

ルーテルにも保守派やリベラル派があるそうですが、もうひとつ Confessional というのはどういう立場なんだろう。分からなかった。そこまで調べている時間はないので……。保守派はいわゆるルテラン・オーソドクシーの継承者のようでした。*3リベラル派はエキュメニズムに熱心なのだそうだ。例のカトリックとの共同宣言もリベラルと保守では受け止め方がだいぶん違うらしい。

そういや、敬虔主義>イギリス非国教会派>エキュメニズムという路線が世にはあるそうなので、そう考えると、ルーテル教会内非正統派が、他教会との融和に熱心というのは、その伝統からすればわからなくもない世界ではあります。敬虔主義も変な付き合いがいろいろとありました。神秘思想にも理解があって、そもそもスウェーデンボルグをドイツに紹介したのはエーティンガーだったりするし*4。マルテンセン先生も、きっとどっちかというとリベラルな人なんだろう*5。地獄も嫌いみたいだし……

なお、英語版ウィキペディアによると、カトリックから正教会に聖職者が帰正した場合、神品機密は受けなくてよいようなことがほのめかしてあったのですが(vested rather than reordained)、そうなんでしょうか。附膏機密は別途必要で、でも神品機密は有効というのは、なにかねじれている気もするのですが。。

*1:フランス語の人たちが「カトリック信仰」というときにはどっちなのかなあ。微妙だ。

*2:作る過程で気づいたこと。日本語版ウィキペディア聖公会ルター派の記述が弱すぎる……信仰義認を主にいじっているのが私ともうひとり明らかにカトリックの方というのはバランスが悪すぎるのではないかと気にかかります。これをみているルーテル教会の信徒のみなさん(いるのか?)、どうぞあなたの知識をみなに施してやってください。m_ _m

*3:でも違うのかも。こっちがオーソドクシーなのかも。あるいは両方ともか。

*4:エーティンガーの研究書リストは、ベーメの研究書リストと見事に人が重なっておりました。まあ、エーティンガーはとてもベーメに影響を受けたそうなので、わからないではないのですが……私がカントを読むようなものなのだろう……そういう、一定のバイアスが入っている可能性があるということは少し銘記したほうが言いのかなとも思った。

*5:ベーメの「神における潜勢力としての自然」を流出論的だといって非難していたけれども、まあ神が必然から世界を創造したというのはコアなキリスト教からは受け入れられないのはわかります。ベーメも神は純粋な愛から世界に存在を与えたとはいっているのだが、一方で彼における自然の諸力の関係の把握が、目的論的であるよりは、流出論的であるのも事実ではあります。……こういうところもどっかシェリングと似てるんだな。