聖☆おにいさん、2巻発売決定

中村光さんのコミック『聖☆おにいさん』、1巻巻末では今年12月予定といわれていた2巻ですが、講談社によると7月23日発売だそうです。ということを id:antonian さんのはてなダイアリーコメント欄にて知る。

素晴らしいです。その報だけで癒されます。教えてくださった方に甚く感謝する。「無事、発売されますように」、アーメン、アーメン*1

発売すぐに読めない*2でのは残念ですが、まあ帰国後の楽しみが出来たと思おう。

聖☆おにいさん』は、イエス・キリストブッダことシッダールタ両人が、21世紀の立川でまったりと下宿するというシチュエーションコメディ*3なのですが、二人の気の抜け方と宗教小ネタが実にまったりといい按配で、ええ、発売以来、世の宗教おたくを席巻している模様。私が最初に聞いたのは某大学の仏教研究者からで、次に教会友達であるO嬢*4が布教し始めたので、これは買わねばなるまいと思って、さっそく求めてまいりました。で、やめておけばいいのに土曜日の晩に手をつけてしまい、明けて主日、うちの教会のちょっと象徴主義ぽい筆致のイコンのハリストス*5ほんとそのままで礼拝の最中にいろんなあらぬことを思い出して吹きこそしませんが実に微妙でした。これから手を出すかたには平日に読まれるよう強くお勧めする。

小ネタがよいというのは既に書いたが、たとえばこんな感じである。

  • 昼寝をするとそのまま涅槃図になってしまうブッダ
  • 浪費家のイエス・キリスト
  • そのイエスの浪費に仏の顔も三度なブッダであるが、自分がはまっている手塚治虫ブッダ』は別会計。
  • 水に顔が付けられずに市民プールで紅海割りをしてしまうイエス
  • 滴礼は受洗者ヨハネの妥協*6の産物なのだった。なおヨハネの顔がビザンチン風イコンの老人風なのも個人的にはツボ。*7
  • お互いに実は気が弱く――要するにとてもいい人なんですね――相手がなにか奇跡を起こしたりあるいは怒ったりすると、うろたえてしまうのもかわいい。
  • お歳暮お中元にいつも牛乳がゆを送ってくれるスジャータさん。
  • 実は牛乳がゆは好きじゃないのだが――たんにそのときは激烈におなかがすいていただけだったのだが――いまさらそれをいえないブッダ
  • いつもお米とかを送ってくれる「かあさん」ことマリアさん。お米とか、というのは旅行先で買ったTシャツとかこまごまとしたものも送ってくれるから、らしい。
  • ネットにはまってアルファブロガーになっているイエス。なおブログの題材はテレビドラマ批評&あらすじ。
  • 当然? mixi にもいるイエス。裏切られた*8とはいえユダがイエスのマイミクになっている。
  • そしてユダにネットストーキング?されて密かに怖いブッダ

そしてこんだけ男男していながらぜんぜんやおいぽくないのも自分としてはツボなのだが、それはたぶん作者が男性でありかつ青年誌の連載だからなんだろうな。やおいってのは基本的に女性向けの性的ファンタジーなので*9
って作者女性なんですよね!なんで男性だと思ったんだろう。だいぶ前の記事だけど明らかな錯誤なので訂正しておく。しかしみんなつっこんでくれよ、水臭いなあ。

ただしキリ教関係は細かいところにやや難なしとせず、どうも作者の方はどちらかというと仏教美術/文化に親しんでおられるのかなと思ったらどうもそのようなのであった*10

まんが☆天国 「まんがのチカラ」『中村光先生』 その1*11

中村:『ブッダ』は家のトイレに置いてあったんですよ(笑)。父は陶芸家なんですけど、自宅で瞑想したり、お寺に頼まれて掛け軸に仏様の絵などを描いて奉納する人だったので、そういう本がそこかしこにあったんです。
http://manganohi.jp/2008/05/12183.html

なおブッダは「ええしのぼん」だからなのか乗馬が(元)趣味だったり絵がうまかったりするのですが、同時に彼は倹約家でもあって普段着ているTシャツをシルクスクリーンで自作している、ということになっている。なので「(パン)×5(魚)×2」とか、毎回彼らが着ているTシャツもファンの注目するところなのであるが、一部で話題になっているのが「父と私と精霊」というイエスのTシャツである。これたぶん「父と子と聖霊」から来ていて、子はイエスであるから私なのはともかくとして、精霊はちょっとキリスト教的にいうとかっくり来る間違いではある*12 。だがどうもこれは作中では設定になりかかっているような気がする、というのは単行本の二箇所で出てきているので……まあすでにこちらも「ま、『聖☆おにいさん』だからいいや(てへ)」という気分になりかかっているので、いいっちゃいいのだが、最初に見たときにとても気になる人が一定数いるというのはこれを機会にいっておきたい。

ところでせっかく2巻がそれも夏に出るんですから、読者プレゼントで「父と私と精霊」Tシャツが出んもんかのう(爆

一日一チベットリンク。北京週報から「銭波副代表、「チベット問題は人権問題ではない」。中国政府側のいつもの主張。政治というもの、意図的にか意図せずにはここでは問わないが、ただ、虚偽と党派的立場と無縁であることは難い。そのような言説に、仮に誤りがあるとすれば、その虚偽と誤謬を紙背に徹して見破るためには、たんに論理的な推論の力だけではなく、想像力も必要であろうと、思っている。

*1:アーメン、アーメンと重ねていう言い方は、聖書だと詩篇ヨハネ福音書に出てくる。ちゃんと典拠のある言い回しなのだ。なおギリシア語では実は「アメーン」なのだが、ラテン語に入ってなぜか短母音と長母音がひっくり返った。ヘブライ語でどうだったかは知らないのでどなたか教えてくださると嬉しい。

*2:ウィキマニア2008の後、しばらくエジプトを見学してこようと思ってます。航空券がまだ取れていないという大問題があるのは忘れる。。取れましたよ、主に感謝。

*3:作者は「ギャグマンガ」という認識らしい。

*4:ってなんかやらしいが、ほんとにイニシャルがOなので仕方がない。

*5:そういうものもある。ていうか19世紀のロシアに象徴主義が入ってきていて、そういう影響下で描かれたもののように見える。

*6:あるいは「やさしさ」

*7:聖書だと6ヶ月しか離れていないはずなのですが、図像学的にはあたかも老人のようにほねほねして描くことになっている。荒野の生活はそんだけ厳しいということなんだろうか?

*8:そしてそれをいまでも忘れていなさそう

*9:って最近はよしながふみさんのホモが主人公の料理漫画とかもあるわけだが……。いや私あれは結構好きなのですけどね。そしてもちろん現実の同性愛者はやおいの中の人とはぜんぜん違うものである。

*10:とはいえ、ペマ・ギャルポさんによると、砂曼荼羅は「腰より下の位置には描かない」ものだそうです。『聖☆おにいさん』ではブッダが天界の地面に描いているのだが。

*11:3回分載のインタビューの1回目。

*12:同じ間違いを意図的にかやっている例がラノベであって、これもちょっとかっくりだった。どんだけ意図的かというと "Veni Sancte Spiritus"を「来たれ精霊よ」とやっていたので……これは確信犯だよねえ?