新年おめでとうございます

というのかどうか。とにかく東方正教会的には9月1日が新年の始まりで、ギリシャ正教会アメリカ正教会*1など修正ユリウス暦のところでは、今日が新年の始まり。もうあと数時間たつと、シナイ山でもアトスでも荘厳に新年感謝祈祷が行われると思われる。

さてid:mallionさんのところでにわかに三位一体論で盛り上がっていたのだが、そこでおもしろい発見があった。議論に参加した、かなりの非キリスト教徒の間で三位一体とは「創造主・キリスト・聖霊」だという誤解が共有されていたのだ*2。それはちょっと違うよねえ、至聖三者は一体としてまた各位格において創造主なのだが、という趣旨でコメントして、次のようなお返事をいただく。

これは外部の人(非キリスト教者)は分かりにくいし、私も誤解していましたが、しかしそう考えるといろいろしっくりします。

これ(引用者注:三者が一体として創造者である)は東方、西方どちらの教会もそういう理解だということでよろしいのでしょうね。なるほど。

キリスト教とマルキオン教 - まりおんのらんだむと〜く+

議論のなかでも言及されていたニカイア・コンスタンティヌポリス信経から引く。訳は正教会のもの。強調は引用者による。

我信ず、一《ひとつ》の神・父、全能者、天と地、見ゆると見えざる万物を造りし主を。
又信ず、一の主イイスス・ハリストス、神の獨生の子、万世《よろづよ》の前に父より生まれ、光よりの光、真《まこと》の神よりの真の神、
生まれし者にして造られしに非ず、父と一体にして万物彼に造られ
(中略)
又信ず、聖神、主、生命《いのち》を施す者、父より出で、父及び子と共に拝まれ讃められ、預言者を以て曽て言いしを。

ニカイア・コンスタンティノポリス信条 - Wikipedia

強調した部分をみてほしい。聖三者、父と子と聖神はそれぞれ「天と地、見ゆると見えざる万物を造りし主」(父)、「万物彼に造られ」(子)、「生命を施す者」(聖神)として定式化される。それぞれが、それぞれの仕方で創造に参与し共働する*3、それが、創造と神に関して、この文書、東西共有のものとしては最古*4の信仰箇条*5が述べていることだ、と私は理解していますが、信者でも神学者でもない人のいうことを鵜呑みにしちゃいけないよw*6

*1:ロシア正教会の流れ。アメリカにはほかにもいろいろな正教会の出店がある。移民の国だからね。

*2:なお一部プロテスタント教派では「父・イエス聖霊」というような表現がされるらしい。それどうだかとは思うのだが

*3:この次に教会についての信仰告白が来るのは、理由のないことではない。自立存在である聖三者の愛に満ちた共動が、聖神の守りのうちに、神の肖像として作られた人間の営みを通じて被造世界において象られる場が教会と呼ばれているのである――と理解する。もっともこれは理想状態における教会像であって、世の現実のすべての信徒共同体は、この遠い目標に神の恩寵によって近似することを信じつつ、あっぷあっぷしているのではあるが。

*4:おおっと。最古の共通の信仰箇条は325年の(原)ニカイアであって、381年のニカイア・コンスタンティヌポリスではない。お詫びして訂正。なお後者は前者を増補拡充したものである。

*5:使徒信条は公会議決定により承認されておらず、東方教会では用いられない。

*6:それはmallionさんが次に引用されているウィキペディアの一節も同じで、信者さんの補筆が入った東方的理解についてはともかく、西方については私が2005年に書いたものがそのまま残っているのはどうなんだろうそこんとこ。この国にいるキリスト教徒の99%、百万人以上は西方教会系の信者さんのはずなのだが……