巨人の背、先人の肩

はてなブックマークのコメントにスターを沢山いただきました*1

Britty よんでいない あれだ、先人の肩にのって遠くを見るんだ。遅れてくること自体は恥ずかしいことじゃない。 2009/01/11

いい詞ですよね! 「先人の肩にのって遠くを見る」。こういうかっこいい言葉をいえる人って頭がいいよね。ええ、もちろん私の言葉ではありません。以下に原典を示します。

  • Dicebat Bernardus Carnotensis nos esse quasi nanos gigantium humeris insidentes, ut possimus plura eis et remotiora videre, non utique proprii visus acumine, aut eminentia corporis, sed quia in altum subvehimur et extollimur magnitudine gigantea
    • Bernard of Chartres used to say that we were like dwarfs seated on the shoulders of giants. If we see more and further than they, it is not due to our own clear eyes or tall bodies, but because we are raised on high and upborne by their gigantic bigness.
    • Metalogicon (1159) bk. 3, ch. 4. Translation from Henry Osborn Taylor The Mediaeval Mind ([1911] 1919) vol. 2, p. 159.
John of Salisbury - Wikiquote

シャルトルのベルナールは云ったものだ*2。我々は巨人の肩に座る矮人のようなものだ。もし我々が彼らより多くまたより遠くを見ることが出来るとしても、それは我々がよりよい視力や優れた身体を持っているからではない。むしろ巨人の比類なき大きさが、我々をその高みに置き、支えているゆえになのである。――ソールズベリのジョン『メタロギコン』

ここで「巨人」といわれ「彼ら」といわれているのは、先立つ世の学匠たちをいいます。この言葉自体はソールズベリのジョン(1118年頃−1180年)の言葉としてよく引かれ、わたしもそう記憶していたのですが、ソールズベリのジョン自体は、シャルトルのベルナール(1124年以降没)の言葉だといってるのですね。いずれにせよ、先人への敬意あるよい言葉だと思います。研究者のみならず、ものを書く人がみな心に留めておきたい名言だと個人的には思ってます。

*1:2009-01-11 15:03 時点で4つ。

*2:初投稿時には「云った」と訳したが、decabat は未完了過去であり、しばしば繰返し云っていたというニュアンスを出すため、改訳した。