Tim Starling の休暇と Brion Vibber の帰還

以下、kozawaさんのIT勉強会と託児所問題 | kozawa のたまに気になることに触発されて。
以前にこんなことを書いた。

突発的なウィキブレイクはそうした[=ウィキ上の活動からくる]ストレスの所産として起こることが多い。多い、と書いたのはそうでない場合もあるからで、プロジェクトと関わりのない現実世界のストレスで何もかもいやになってプロジェクトも放り出すということだってある。失恋・死別・離婚・解雇・流産……世の中しんどいことには事欠かない。

休む。 - 鰤端末鉄野菜 Brittys Wake

しかし少数とはいえ、嬉しいことが(リアルに)あってライフワークバランスを見直した結果、プロジェクトへの参加を減らすという型のウィキブレイクもある。ウィキペディア英語版で知人が最近管理者権限を返上したのだが、理由は昇進のためプロジェクトへの参加時間を減らす必要が出たから、というのであった。こういうお別れは寂しさもあるが、やはり嬉しさのほうがまさる。

最初期からの参加者で、いまはウィキメディア財団の職員である Tim Starling が最近長期のウィキブレイクに入った。彼のばあいはたんなるボランティア活動からの離脱でない。在宅とはいえフルタイム職員で、ウィキエンジンMediaWikiの開発のリードであり、general code reviewer である。D論に専念するためにいちどプロジェクトから離脱したのだが、数ヶ月しないうちに戻ってきてしかもD論提出直前なのに大学をやめてウィキメディア財団の職員になったというエピソードの持ち主だ。

その彼が今年の夏から休暇を取っている。かなり長い本格的な休暇らしい。理由は産休である。むろん彼が産むわけじゃなくて、妻の Angela Beasley-Sterling がつい先日女の子を出産した。それにあわせて、Tim もかなり長く休暇を取るようだ。

財団ではパートタイムをフルタイムに昇格させたり、退職したもと職員(ていうか前のCTO)がパートタイムで戻ってきたり、Tim が抜ける穴を埋めるべく努力している。昨年の9月までCTOだった Brion Vibber はそのあともボランティアとして MediaWiki 開発やサーバ管理に関わっていたが、やはり関与はだいぶん減っていた。今回 Brion は短期雇用のパートタイムという待遇で、他の開発者とともに general code review を担当するらしい。コミュニティの重鎮でもある Brion が「戻って」きたことは開発コミュニティを超えて、ウィキメディアのコアコミュニティに広くなにか暖かい安心感をもたらしている。

Tim の不在を完全に埋めることはたやすいことではないと想像するが、Brion をはじめ多くの人がそのために努力している。Tim と Angela には親子三人水入らずの時間をたっぷり味わってもらいたいと思う。

ふだんこういうことはウィキメディア・プロジェクト用の日記に書くのだが、Angela のほうはウィキメディア財団の最初期の理事であったり、Jimmy Wales とともに Wikia の共同創業者であったり、それなり有名人なのでこちらに書いてみた。