WCJ2010 Tech Talkの落穂ひろい

登壇者のひとりであるRyanはウィキメディア財団の技術系職員でかつ英語コミュニティにのみ参加しているのですが、にもかかわらずウィキペディア(それも一般論でなく日本語版固有の事情とか)のコンテンツやその外部利用に関する質問なども質疑の時間には出ました。それは司会の日下さんや受付にいたわたくしなどが補足的にお答えしました。私がコメントしたのは2つ、いわゆるカスタマーサポートのようなものはないのかという質問と、アカデミア(学術機関)との協働についての質問です。会場では時間の制約だけでなく、本来の話題であるMediawikiからは離れるので簡潔にまとめましたが、ここで補足をしておきます。

先にアカデミア(学術機関)との協働についてご紹介しますと、

  • ウィキメディア財団と研究者との共同研究は2007年以降、散発的にいくつか行われています。カリフォルニア大学サンタバーバラ校との共同研究 quality.wikimedia.org や、国連大学UNU-MERITとの共同調査(結果)などはその好例です。現在、コミュニティも交えて包括的な受け入れ態勢を構築中ですが、それにはまだ少し時間がかかります。現在のところは info at wikimedia dot org あるいは調査対象としたいウィキメディア・コミュニティへ直接お声がけいただくのがよいかと思います。関西ウィキメディアユーザ会でもご相談に応じます。お気軽に wikansai at gmail dot com へお問い合わせください。
  • アカデミアにいる方を含め、ウィキペディアへの理解を深める機会を設けるセミナー「ウィキペディア・アカデミー」もドイツなど世界各地で行っております。日本では残念ながらまだ実施実績はありません。実施をご希望の方、とりわけ関西地方の方は、関西ウィキメディアユーザ会へご相談いただければと思います。
  • 学校現場とウィキメディア・プロジェクトとのかかわりとしては、”Wikipedia in Schools”という取り組みが世界各地で始まっています。学校の授業のなかでウィキペディアに投稿する、あるいはウィキペディアの記事を利用する取り組みを、コミュニティから教員をはじめとする学校関係者へ支援するものです。日本では行われておりません。これについても将来的には日本で実施できるといいなあと、プロジェクト参加者としてまた一人の日本人として思います。
  • また教育を主としない学術機関、博物館や図書館等に関しては、最近ご紹介したGLAM-WIKIイニシアティブがあります。詳しくはhttp://d.hatena.ne.jp/Britty/20100921/p1をご覧ください。

次に問い合わせについてですが、公開したくない問い合わせは、日本語でお書きになる場合や日本語版プロジェクトに関するものについては、財団が設けている問い合わせ先のうち info-ja at wikimedia dot orgへメールくださるのがよいと思います。そうでないものなら、info at wikimedia dot org のほうがよいでしょう。

ボランティアベースのコミュニティにはお客様というのは原理的にいないという指摘を昨日の Tech Talk についてのツイートで@koyhogeさんがしておられましたが(原文)、MediawikiはともかくWikimedia全体としては一応対外対応窓口をもっています。日本語による問い合わせ・日本語版の各ウィキメディア・プロジェクトに関する問い合わせで財団に来たものはinfo-ja at wikimedia dot orgに集約しています。さすがにコンテンツ内で言及された第三者の方や報道機関の方にも一律に参加をお願いするわけではなく、したがってどんな場合でもコミュニティに入って公開で議論するしかコミュニケーションの手段がないということはないのですね。ただし上記のアドレスに問い合わせを送ったからといって、かならず職員が応対するというわけではなく、ほとんどの場合はウィキメディア・プロジェクトのボランティアスタッフがまず応対します。日本語での問い合わせは主に日本語版プロジェクトで活動するコミュニティのメンバーが対応するということになります。

なお付言しますと、コミュニティ内での意見の対立などでウィキの編集制限をかけられた場合などは、ほぼ間違いなくウィキメディア財団が介入することはありません。日本語を話すボランティアスタッフを回避して英語で問い合わせをすれば財団が取り扱うかというと、そんなことはなくて、問題となっている事柄が日本語版プロジェクトに関する限りは、やはり日本語を話すボランティアスタッフの手元に回ってくることがほとんどです。このことについて違う理解や想像をしておられる方が少なからずおられるようなので、この機会に書いておきます。