今週の本

  • 上田閑照エックハルト講談社学術文庫 ただし説教集除く。ラテン語文献に即した、ドミニコ会的でかつ非トミストな存在理解。存在≠本質であるところはトマスを継承するが、知性を後者に帰属させ*1、ゆえに前者を非述語化する議論は精妙*2。カントのコプラについての指摘とも重なるが、カントは時代的に直接は読んでいないだろうな*3フランシスコ会も異端審問をやっていたとは知らなんだって、そうか『薔薇の名前』があったな。
  • Orthodox Study Bible: New Testament and Psalms 一部のみ瞥見。クリュゾストモス大人気。
  • 山口和子『後期シェリングと神話』晃洋書房 Freiheitsschrift, WA, PhdM, PhdO usw. 2002年にPhdO草稿(PhB)と1814-1816年の日記が出てるのを今ごろ知る。まあその辺まで当分手が出そうにないが。悲劇論が2002年にとてもホットな話題だったことを改めて知る。こんなこと書くと怒られそうだが、もっと自信を持って書くべき、というか攻めに出るべきなんだな。うん。脱キリスト教的方向を強調するのは日本人研究者のある種の癖なのだが、西欧の研究者*4は逆に過度にシェリングキリスト教的側面をいいたがるので、バランス的にしょうがないのだろうか。私としては「キリスト教的ではあるが、脱西方教会的」といいたいところ。最初期シェリングギリシア教父の影響を指摘する Holz などの読みもあるので、これはそう外してはいないと思う。

*1:エックハルトはオッカムにいろいろ批判されているのだが、出てくる結論としてのあるべき信仰生活は似ているように見えるにもかかわらず、って、エックハルト神学が知性を優先させる以上、主意主義者オッカムとしては反駁したくなるということなのか。

*2:異端宣告される訳だ。ドミニコ会は異端宣告撤回運動をがんばってやっているそうだが、サヴォナローラの異端宣告撤回のほうが早くてこちらはまだというのは、エックハルトの指摘がそれだけ神学の急所を衝いているということか

*3:クザーヌス経由で受容した可能性はあるが

*4:特にカトリック系と一部プロテスタント