小女子の読み方

水文学を「みずぶんがく」と読んでしまう人がいる。私も最初はそうだった。なじみがない字は、読めないのだ。とくに複数の読みが可能な場合には、人は文脈や自分の知識などに引きずられて必ずしも筆者が意図したようには(そしてたいていの場合「正しくは」)読まないことがある。

「小女子焼き殺す」に求刑1年6ヶ月は過剰だ、空気を読むべきだという声が複数あるようだ。たとえばはてなブックマークこのエントリ、しかしこれは無理だなあとコウナゴの釘煮が大好きな私はうっすら思う。だってコウナゴは焼いて食べるものじゃないからだ。

Google「"こうなご OR 小女子 OR コウナゴ" 焼く -殺す」を調べると2件だった"こうなご OR 小女子 OR コウナゴ" 焼くをみると12,400 件だが、トップ20件のうち19件がこの事件、残る1件も「小女子は卵焼きを焼く小さいフライパンに薄くオリーブオイルをひいて軽く炒ると美味しいよ」と「コウナゴを焼く」話ではない。一方、"こうなご OR 小女子 OR コウナゴ" 煮るだと7,480件、この事件に関係したものも結構あるけれど、料理の話が相当多くなる。なお「炒る」だと732件となる*1。そして料理用語としては焼くと炒るは違うものである。コウナゴのような小魚を鍋でそのままあるいはわずかの油を引いて加熱することをふつうは「焼く」とはいわないのだ。

かくて「コウナゴ焼く」というのは現代の日本語には普通には登場しない組み合わせである*2。そして、文脈からして問題の書き込みが「小(学生の)女子」というダブルミーニングを狙ったことを否定するのは難しいと個人的には思う。「小女子焼き殺す」は「コウナゴ」とのみ読まれるべきであり、そうでないのはしゃれを知らないという主張をする人がいるとしたら、それは相当無理のある主張だと思う。むしろ、日常語でそのような用法が皆無であることから、もう一方の読みが取られる可能性がもっと強くなるのではないだろうか。コウナゴを知っている人ほど、この文脈ではコウナゴとは読まない可能性が出てくるのである。これを過剰反応と非難する人が親や保護者の気持ちが分からないとか云うことをいうつもりはないが、ただしコウナゴを普段の生活で知らない人ではないかと偏見だが、思っている。

*1:検索キーは「"こうなご OR 小女子 OR コウナゴ" 炒る」

*2:主婦歴10年余のあてくしは少なくとも聞いたことがありませぬ。