日本語でおk

英語に関するエントリを最近いろいろ書いてきたが、実をいうと私はあまり英語が好きではない。嫌いというわけではないが、あまり私好みではないのである*1。なのだが乗りかかった舟で、もうしばらく書いてみる。この前書いた辞書についてのエントリはてなブックマーク的な人気のなさ(2日たったところで7ブクマ)をみると、ここで読者を放り出すのはちょっとひどいのかなあ、という気もちょっとしているのです、なのでもう少しお付き合いください。

英語の辞書(と英語の文法書)を紹介したのだが、匿名ダイアリー氏がほのめかすように、かなりの人が怖気づいたのか、それとも私の説明がたんにへぼいのか、アクセスの割りにはブクマがのびていない。まさにタイトルのままの憂鬱な展開となっている……。ただここは私としては譲れないところなので、今回ははっきりいう。英語力を本当に伸ばしたいなら――英語で自分の意志疎通が出来て、英語サイトが辞書を引きながらでも読めるようになりたいなら――英語で書かれた英語の辞書と文法書を手元において、分からないことがあればつねに参照して下さい。UNIX で誰かにものを尋ねていっても最終的には man ほげほげといつかいわれるように、他の手段はない。私はそう思っている。日本語の文献に頼っている限り、よほどの良書*2でない限り、いつか限界が来ると思う。ただしお手元の日本語の本を別途参照してはいけないというわけではないので、それは大事に取っておいてください。

ネイティブスピーカーに訊く、というのは一見よさそうだが、しかし英語ネイティブは英文法をあまり知らないし、階層や方言による偏差もあるので、あるネイティブスピーカーの意見が本当に正しいかどうかは保証の限りではない。

次にこれはもっと迂遠にみえるだろうけれど、外国語を覚えようと思うなら、二つ絶対に必要なものがある。ひとつは時間で、ひとつは母語の運用能力である。まず、時間のことだが、外国語を使うというのは、ひとつの技能なので、習得するまでにある程度まとまった時間をつぎ込む必要がある。逆上がりや水泳、自転車や料理と同じで、慣れてしまえば難しいこともないが、こつをつかむまでにはすこし時間がかかるのだ。ある外国語をそれなりに使える水準にしていきたいと思うなら、一日に最低15分は時間を取ってください。理想をいえば1時間欲しいが、まいにち最低15分はその外国語のための時間に確保することが必要だと思う。1週間に一度ということではなくて、毎日15分費やすことが必要だ。私は風呂の時間をいつも新規習得中の外国語に充てることにしている*3。この「お風呂外国語」については別エントリで詳しく書くつもりだ。

もうひとつ必要な母語の運用能力――これは外国語(第二言語)での表現能力は母語の能力を上回ることがない、ということから来ている。母語で、わたしたちの場合は日本語で、表現しわけられないことは、まして外国語では表現できないのだ。というわけで、日本語能力もある程度意識的に開発していく必要がある。よい本を読んで、実のある会話をして、ときにはブログなどまとまったものを書いて……といままでしていた言語生活をもう少し意識的に反省してみるのがよい。少し実践よりのアプローチとしては、大野晋『日本語練習帳』岩波新書が、普段自分が使っている日本語の質について考えさせる好著だと思う。

日本語練習帳 (岩波新書)

日本語練習帳 (岩波新書)

外国語を覚えていくときに語彙をどうやって増やすかということが話題になるけれど、これもある程度までは無理に機械的に覚えるのはかえって効率が悪いと思う。ある程度までは読んだり聞いたりするなかで身に付けるほうが却って効率がよい。それよりは、自分のもっている日本語での表現能力のありようを自覚した上で、年齢や経験に相応と期待されるには足りなければ、そちらを埋める努力もしたほうがいいのじゃないかと私は考える。自覚を深めるために『日本語練習帳』はよい一歩になると思うが、ほかにもNTTコミュニケーション科学基礎研究所で「語彙数推定テスト」を提供している*4

語彙数推定テスト
http://www.kecl.ntt.co.jp/mtg/goitokusei/goi-test.html

英語もいいのだけれど、まず自分の母語である日本語でコミュニケーションが取れるのか、自分の考えや他人の考えを的確に表現し理解できるのか、ということも頭の隅にいれておいてほしい。語彙力推定テストで自分の経歴相応の結果が出なかった方は、……まあ、あれだ、がんばってください。練習帳、ほんとにおすすめですよ。

きょうのまとめ。

  • 英語を身につけるには英英辞書と英語で書かれた文法書で武装しろ。
  • 英語を身につけるには一定の時間をかけろ。一日最低15分は英語の練習に充てる。
  • 英語を身につけるにはまず日本語から。大野晋『日本語練習帳』はよい本。

だいじなことなので(r

このあといくつか実践的な学習法について書く予定。「お風呂で外国語」のほか、読み方と作文についてはそれぞれ書くつもりでいる。どうぞお楽しみに。

関連エントリ:

*1:むしろイタリア語のほうがずっと好きだ。ただし目下のところマイブームはスペイン語

*2:それこそ英語でその翻訳が出て、ネイティブスピーカーが読むような文法書をここでは想定している。

*3:だいたい毎回30分くらい。それ以上浸かっているとさすがにのぼせる。

*4:ちなみに私は64000語相当でした。前になんどかやったときもその前後なので、まあそんなものなのだろう。ちなみに2問落とすとこの点数になります。