英単語を覚える3つの方法

英単語を覚えよう……?

kagakaoruさんのhttp://d.hatena.ne.jp/kagakaoru/20090118/1232269455ホッテントリになってます。書いてくださいとお願いしたわたくしも嬉しいです(自分が知らない本も教えていただけましたし)。自分が最初にブクマしたエントリがホッテントリしたのって初めてじゃないかなあ。という意味でも感慨深いです。まあそういうことはおいて。

反省的思考が随所にみえてよいエントリだと思いましたが、もちろん細部には意見の相違が出てきます。発音についても思うところがありますが、単語が大事だと強調されて、同じ意見の方を紹介されているのが目に留まりました。id:rhb さんのはてな読みでも、あのマーク・ピーターセンが日本人の英語の欠点として単語力不足を挙げているそうですね。むむ。

……いままで買った単語帳ほぼすべてを本棚の肥やしにしたわたくしには耳の痛いおことばです。ちなみに最後までやり遂げた数少ない単語帳は名和雄二郎『ロングマン エルドス2000活用英単語』 (asin:4342100207)と森一郎試験にでる英単語』(いまはCDがついて『試験にでる英単語―耳から覚える (試験シリーズDX)』になっているらしい)の二つ。どちらも20年以上前の話です。まあ受験だったから必死だったんでしょうね。あとはすべて最初の数章で挫折しています。わたし単純な暗記物って極度に苦手なのですよ。ということはわかっているけど英語産業にうまうまと騙されている観あり。

そういう挫折を踏まえて考えまするに、単語帳を全部暗記するだけが語彙増強じゃないはずなんだ。それにみんなが単語増強をいつもやる必要があるわけでもないんだ。もう無駄な単語帳は買わないようにしようと、新春にあたって改めて心に誓いました。そう、わたし自身が単語暗記をほとんどやらずにきて、しかしそこそこは読み書き出来るようになったこともあり、痛切に単語力の不足を感じる場合以外は、外国語の語彙増強は特別にしなくてもよいんじゃないかといまは思っています。

もちろん、それは逆に言うと、痛切に単語力の不足を感じる場合には適切な語彙増強を試みたほうがよいということでもあります。

英単語を覚えるべき3つの場合

個人的には、語彙増強をやったほうがいいのは、とくに次の3つの場合だと思います。

  • 初級文法を終わって、ある程度まとまったものを読み始めるとき
  • 試験対策等や外国への居住のため、ある程度まとまった語彙セットを一定期間内に身につけることが望ましいとき
  • 新しい分野に関心をもち、この先まとまった量の文献を読んだり、あるいは人と議論したりすることがわかっているとき

いわば、初級者・中級者・上級者ごとに、語彙増強をやったほうがいい場合というのがありえるんじゃないかと思ってます。そうして、それぞれの段階にあった覚え方があるかなと思います。

初級者:連想で覚える

まず、第1の場合「初級文法を終わった人」について。

じつは読むほうに限っては「一語一語辞書を引くのが苦にならない」方は、とくに語彙増強をする必要はないかと思います(わたしはたぶん幾分はこの族に属するのでしょう)。また、「翻訳文を読んだあと外国語文を読む」多読での訓練をメインにされていく方も、特別な語彙増強訓練をしなくてよいかと思います(自然と覚える)。

逆に、初級者用に書かれた、使用語彙が800語前後に制限された外国語の文書が理解できない人、そういう人は語彙増強をするには早すぎます。使用語彙800台は中学卒業のレベルです。そういう文書が理解できない方はおそらく初級文法が身についていないのだと思います。短文の繰返しなどによる初級文法の訓練をやり直すほうが先でしょう。

基本語彙800あたりから初めて、数千語くらいまでを覚えていくのが効率がよいかと思います。ここでお勧めしたいのは、長崎玄弥さんの方法です。つまり連想を利用した丸暗記です。

青版・奇跡の英単語―新傾向の全基本単語スピード記憶法 (ノン・ブック)

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実際にわたしが使ったのは赤い帯のほうの通称赤版ですが、これは書影がありませんでした。長崎さんの本では、最初の1章と2章が、見開きの片方が英語、もう片方が日本語のリストになっていて、1章にはたしか500語の名詞が載っていました。それとも1000だっけな。よく覚えてないや。そうして、リストの配列は太陽‐月‐星のような連想によって並べられていました。本では一日に10語づつ覚えるように指導していましたが、私は一度に7つずつ覚えていました。そうして、覚えた後で、最初は日本語のリストをみて、次には本を閉じてリストを暗誦するのですが、これは無意味なものの記憶ではないので、わりとすらすら思いだすことが出来ます。その日の分を覚えたら、いままで覚えた分とあわせて、リストの冒頭から日本語を見ながら読み上げ、余裕があるときには暗誦もします。具象名詞を覚えるには、この連想法が一番定着が良いように個人的には思います。

リストのかわりにマインドマップを書いて覚えることも出来るかなと思います。マインドマップは、自分の語彙チェックにも使えます。適当な大きな概念(たとえば宇宙 Universe など)を中心に書いて、そこから外国語でマインドマップを書いて広げていきます。どうしても出てこないときだけ日本語で書き、そこはあとで辞書を引いて確認した上で、マインドマップを見て意味を覚えます。

第2の場合。試験対策等や外国への居住のため、ある程度まとまった語彙セットを一定期間内に身につけることが望ましいとき――これは、外国への居住の場合ですと、同じようにまず具象名詞を覚えることをお勧めします。「生ゴミ」とか「洗剤」とか「停留所」とか自分の生活に出てきそうな具体的な単語をある程度覚えていかないと、最初ばっちり不自由します。少なくともわたしはそうでした。それと若干の慣用句ですかね。わたしはドイツでの最初のゴミ出しのとき、同じマンションの人の「ようわからん」(Ohne Ahnung)が分からずに何度も「このゴミどこに捨てたらいいですか」を繰り返すという謎の押し問答をしました。はい。

中級者:語源で覚え、文で覚える

いっぽう試験対策用の語彙暗記ですが、これは大学受験用などで色々とよさげなのが出版されているようなので、出来るだけ最新のものを買うのがよろしいのではないでしょうか。こと試験対策については、最新の知見が反映されている、具体的に的を絞り込んだものがお勧めかと思います――外したときがちょい悲惨ですけどね。

英語の抽象名詞のように、ラテン語(や若干のギリシア語)由来のものが多いものを覚えるには、ラテン語(や若干のギリシア語)の語根・接頭辞・接尾辞を覚えていくとお得なのですが、おそらく市販の単語本でもそういうメソッドのものはあるでしょうから、詳細には述べる必要はないかとも思います。長崎本の赤版でも、ラテン語の語源による暗記法が紹介されていました。

また、この場合でも、出来るだけ単語だけを覚える(あるいは外国語の単語と日本語の単語を結びつける)のではなくて、その語を使った文の中で覚えるのがよく、またその文の内容は出来るだけ自分になじみのあるものにするのがよいと思います。Cobuild の辞書はその点、使用単語が限られていて、かつすべての用例が文の形で提供されているので、語彙増強のときに参照するのによいかもしれません。

追記:英語勉強法・英語学習法相談室: 106)6. 英英辞典使用法アーカイブで紹介されている、「1日にひとつ、すでに(日本語で)知っている単語を英英辞典で引き、その説明文を英語で暗記する」(説明に使われている英語は和英で調べてよい)という方法は、無理なく実践できて、よいのではないかと思います。

上級者:ふたたび連想で覚える――分野別事典と類語辞典

第3番目。「新しい分野に関心をもち、この先まとまった量の文献を読んだり、あるいは人と議論したりすることがわかっているとき」――相当外国語が出来る人でも、まったく新しい分野のものを読み始めたときには、最初は聞いているだけになりがちです。専門用語がわからないからです。っていうかこれは母語でも起こりえる現象ですね。こういうときは、いちいち辞書を引いたり、人に訊いたりしているのでははかどりません。その分野の語彙集や事典などで重要語句を一通り頭にいれるのがお勧めです。もちろん、とくに急がない場合では、辞書を引きながらでも構いません。このあたりになってくると、相当その外国語が出来る人特有の問題であって、どうやって語彙を増やすのかはかなりに趣味の問題かとも思います――おそらくもうその人なりの語彙増強法があるはずなので。

わたし自身は、上述の通りあまり語彙増強を意識的にはやりません。読んでいく上で辞書を引き、たまにはシソーラス類語辞典)を引く程度です。シソーラスMerriam-Webster のもののほか、 http://www.visuwords.com/ という単語連関を視覚化したサイトがあり、愛用しています。Visuwords はオープンソースで、ウェブ上で無料で利用できるだけでなく、ローカルにシステムとコーパスをインストールして使えるようでもありますが、自分ではいまのところそこまではやっておりません。

ここまで書いてきて、語彙増強に関しては、「辞書を壊す」という自分なりの方法もあったことに気がつきましたが*1、しかしそれを書きはじめるとエントリが長すぎるかなと思い、やめておきます。

関連エントリ:

*1:最近あまりやっていない。おもに20代から30代前半の話。