かんたん英語で英作文

言語学習ではアウトプットが重要で、最初のうちは短文を音読したりあるいは日本語に翻訳したりということを繰り返します。最近紹介したお風呂勉強法 - 鰤端末鉄野菜 Brittys Wakeもその変形です。ですがこれには(人にもよりますが)重大な欠陥があります。飽きるのです。単純すぎると、人は飽きてしまいます。英作文の場合には、繰り返し同じ問題を解くことで、なぜそうなるのかが分かっていないのに答えだけ覚えてしまう(しかも依然として応用は出来ない)という罠もあります。わたしだけかな。

この退屈さを補うには自由英作文がよいのですが、これもあまり難しいことをやろうとすると挫折します。Re: 日本語はないほうがいい - 鰤端末鉄野菜 Brittys Wakeには拙文がありますが、実はこれは書くとき一気に書き上げています。さすがに upload 前後にはチェックしましたが。この位の分量を辞書なしで書くのに1時間はかかって、なので辞書を引き引きではおそらく1時間を越えたでしょう。この忙しいのにそんなことやってられないやね。そうはいっても、英語でどういったらいいのか分からないと書きようがない? いやまったくごもっともです。ですが、よく云われることですが「イギリスでは6歳の子どもでも英語を喋る」んですよ。よろしいか。

……ということを私は倉谷直臣『英会話上達法』で学びました。この本には「英語は小学生に分かるように話せ」という指針が出てきます。小学生に言い聞かすように、簡単な言葉を選んで英語を話す。これならどんな場面でもあまり困りません。まあ、まだるっこしいことは認めます。ですが何も云えなくなってああうう呻いているよりはいいよね、たぶん。

実際、用いる語彙があほほど単純でも、それなりの内容を伝えることは出来ます。アメリカの国営放送 Voice of America では1500語を基本とするプログラムを提供していますが*1、案外いろいろな話題が登場します。こいつはニュースが素材ですから、ありがちな学習教材のようにいかにもお子様向けの内容にげんなりさせられる、ということもありません。なお1500語というのは高校卒業時に既習の英単語数とそう変わらないのだと記憶しています。ロングマン現代英英辞典、通称 LDOCE が、これは外国人用の英英辞書ですが、語義説明部分は2000語です。1500語から2000語というのは高校卒業に毛が生えたくらいの語彙だけれども、もうそれで説明できないものは、ないといえる。政治や文化から自然科学にいたるまでて、専門用語抜きで、1500語や2000語という限られた日常的な語彙で、限界はあるにしても誰でもそれなりに語り、論じ、伝えることが出来るのです。あなたが高校をすでに出ているのなら、もう下地は十分です、あとはその英語力を活用するだけでよい。使ううちに、ぐんぐんうまくなっていく自分の英語に驚くこと間違いなしです――もちろん使い続ければ、の話ですけども。

作文を始めると、分からない単語を和英でつい調べたくなります。ですがここは我慢しましょう。まず最初に全部書きましょう。直に英語で書くのがつらいなら、10歳くらいの子どもに説明するみたいに簡単な日本語で考えて、それを英語に置き換えていきます。それでも英語にならないところはとりあえず線でも引いてあとで戻って埋めてみます。最後までなんとか書きあがったところで初めて和英を見るくらいでちょうどよいかと思います。

そうはいっても、一人で黙々と英作文をするのはやはり退屈なことです。せっかくですのでウェブに載せて公開してしまいましょう。誰かネイティブが添削してくれるかもしれません。そこで lang-8 というサイトがあるそうですが、私のお勧めは Simple English Wikipediaです。最近あの xkcd に取り上げられたので、ちょいとにぎわっていると中の人からは聞きましたが、それでもまだまだ日本語版や英語版のウィキペディアに比べると、静かでのどかなウェブサイトです*2項目"Japan"を覗いてみると、Osaka Prefecture とか Kyoto Prefecture とか、結構メジャーな主題でもまだ記事がないのが分かります。日本語版や英語版のウィキペディア、あるいはもっとまっとうな詳しい資料が手元にあるならそれを見て、まずは簡単な作文から始めるといい感じかな、と思います。

ウィキペディアでは履歴(history)の差分を見ることができますので、後で誰かが添削してくれた場合でも、自分の版との差分を取れば簡単に異同をチェックできます。それぞれのページの一番上の左から4番目のタブに "history" というのがあります。そこをクリックして、自分のユーザ名を探して、それから最新版との差分を見れば、どんな変更があったかわかります。いま「ユーザ名」といいましたが、投稿するならユーザ登録を断然お勧めします。自分のユーザページに「日本人なんです。英語の勉強をしています。添削大歓迎」と書いておけば、かなり周囲も温かく見守ってくれると思います*3。ユーザページでは、このとき、通称「バベルテンプレート」を使うと、自分の言語能力を簡単に表示できます。詳しくは http://simple.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:Babel をご覧下さい。さらに添削のお願いをダメ押ししたければ、記事のサマリーにも "I'm no native speaker of English language. I will thank you for your correction very much.*4" とかなんとか書いておくとよいでしょう。

ウィキペディアに投稿することの利点の一つは、自分が書いたものが人の役に立つことが(たまにでも)あることかなあと思っています。自分は英作文の練習が出来て、ネイティブに添削してもらって、さらにそれが人の役にたつ。これって結構いい感じの循環じゃないかと思うのです。もしかすると友達になってさらに深いやりとりをする仲になれるかもしれません。ウィキペディア・コミュニティの水が合うかということとも関連するので、誰でもそうなるとは保証しかねますけれども、しかし何事もまず最初の一手を打たなければ、なにも起こりはしないのです。勇気を出して、http://simple.wikipedia.org/ に投稿してみませんか :-)

関連エントリ:

*1:固有名詞などは別勘定。

*2:xkcd についてはxkcd はきほん - 鰤端末鉄野菜 Brittys Wakeをご参照ください。

*3:なお私のユーザページは http://simple.wikipedia.org/wiki/user:Aphaia にあります。

*4:これを Your correction will be very appreciated とするほうが私自身は好みなのだが、しかし「お、この人、英語できるじゃん」と過大評価されても困るので、ここはご自分の言葉で書くことをお勧めします。