日本語では何ていうの?

日本人以外の人(正確には非日本語母語話者)と話していると「○○は日本語で何ていうの?」と訊かれることがある。普通名詞の場合なら、たんに相当する単語をいえばいいのだが、固有名詞でもこうした質問が出ることがある。

最初はわたしも、何を訊かれているのだか、訳が分からなかった。だけれども、相手にしてみればそうとしかいいようがないのだということはだんだんに分かってきた。大まかに場合はふたつあって、まず固有名詞なのだけど日本語には日本語での名称がある場合(例えば The United States of America は日本語では「アメリカ合衆国」("Amerika Gasshukoku")だし、The United Nationsは「国際連合」もしくは「国連」("Kokuren")である。そうかと思うと Unicef が「ユニセフ」と音訳されるのみであったりと、言語慣行にもいろいろあるので、これはその言語に通じた人でなければ分からない。

もう少し分かりづらいのは、音訳しただけなのだけれど、その音訳に日本語独特の癖がある場合。これもその言語に通じた人でなければ分からない。ただこの場合、日本語が分かる人だからといってその独自性に気づいているとは限らない。id:bkm8さんが、以前日本すげえって誰がいってるのかな - 鰤端末鉄野菜 Brittys Wakeに下さったコメントは、こちらに属するものかと思う。

I'm from Japanっていったらit's in Korea,right?って自慢気に言われたことはある。/How do you say "Britney" in Japanese?とかも。マイケルがミッシェルになる、みたいな変化を期待されてんだろうか。

はてなブックマーク - bkm8のブックマーク / 2009年1月12日

マイケルがミッシェルになるほど大きな変化でないにしても、英語の Britney [britni] と日本語の「ブリトニー」("buritoni")は違う。音節数が違うし、アクセントの位置も違う。さらにいえば英語の r と日本語の r は一緒でない。おそらく多くの非日本語母語話者にとってこの二つは同じ単語には聞こえないだろう。bkm8さんに尋ねた人は、そういうことを知りたかったのではないだろうか。

なおこういうことは他にもあって、例えばわたしは冬にはオランダ料理のヒュッツポットというのをよく作るのだが、このレシピを教えてくれたオランダ人はやはり「日本語ではなんていうの?」と尋ねてきた。ヒュッツポット("hyuttupotto")となるのだと教えてやったところ、奴は馬鹿笑いをしてしばらく収まらなかった。彼にとっては hutspot と hyuttupotto は全然違うことばだったのである。

余談だけれど、外国語でなんでも音節を CV 構造つまり子音+母音の組み合わせにしてしまうところ(あるいはそのように聞いてしまうこと)は日本人訛りの大きな特徴のようである。そこで(私自身はかなりどうでもいいと思ってはいるのだが)、外国語を話すときの日本語訛りを克服したい方には、発音の際に余計な母音を増やしていないかどうか、意識することをお勧めしたい。

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