狭い世界

マルティンゼン*1の翻訳本の解説を読んでいたら、この人、ミュンヘンシェリングやフランツ・フォン・バーダーに教わっているのですね@_@ そいうつながりなのか……1830年代のことなのですが、その頃バーダーはマルティンゼンにベーメを勧め、レポートを書かせたりしているようです。うぅぅ。

バーダー自身は新スコラに分類される、カトリック神学者なのですが、マルティンゼンはルター派神学・哲学を勉強にドイツまで来ているわけで(でもあえてミュンヘンにいくんだから、その時期はカトリックを勉強しにいったと考えたほうがむしろいいんだろうな……いやたんに哲学をやりにいったのかしら。ヘーゲルとは最終的にそりが合わなかった模様。)、そういう状況で、トマスとかじゃなくてルター派異端ちっくなベーメを勧めるバーダーはちっとかこいいと思った。

なおマルティンゼンはその後ルター派組織神学の大家として知られるようになり*2、かつ「キリスト教以外でもあらゆる人間の活動には神へ向かうよきものがある」と主張*3するキリスト教神学者として知られるようになり、最晩年にいま私の手元にある本をものするのですが、若いときに読まされたベーメは「最初ぜんぜん魅力的じゃなかった。とっつきづらくて、つらかった」*4そうです。……まあねえ……

*1:ドイツ系名前のようなので。シュレスヴィヒ出身でデンマークとドイツで教育を受けている。

*2:いまはぜんぜん読まれていないと思いますが、解説によると「バルトが出る前はみんなこれ読んでた」だそうです。ドイツでもイギリスでも……って教派がぜんぜん違うだろう。いいのか、それで。[そこまで互換性があるなら、じゃあよほど教会合同すればいいのに、と思う私は世間知らずなのでしょうか。でもまあそれはそれでいいのか、カントも自分が大学で哲学を教えるときには自分の本じゃなくてバウムガルテンを教科書に使っていたっけ。]

*3:この主張自体は、アレクサンドリアのクレメンスなどにもあり、さほど珍しいものではない。少数であるとはいえようが。「すべて神の作ったものはよい」とする楽観的な世界観がその根底にはある。

*4:序文より。