初心者による初心者のための英語の本

タイトルはホッテントリメーカー

RQについてご教示下さったid:mallionさんが

mallion *教育 最近のこのシリーズのエントリを読んでいて英語を勉強しなおしたくなってきた。

はてなブックマーク - すでにガラパゴスだった日本の英語教育 - 鰤端末鉄野菜 Brittys Wake

といっておられたので、ご返礼がわりに、また応援として、私が英語初心者時代に読んで深く印象に残っている本をいくつかご紹介しておく。ただし以下に挙げる本はすべて、いつ読んだかは記憶にないほど昔に実家で読んだものと思われ、つまり今のうちの本棚にはなかった。なので内容はすべて記憶に頼って書く。実際に本を手にとってみて「いや違う全然違うよ、書名間違って覚えてね?」ということがあってもごめんなさい勘弁してください。恥ずかしながらさいぜんございましたように、細部の記憶力はわたくし弱いのです……。

NKの新・英会話上達法―ネット時代に還ってきた

NKの新・英会話上達法―ネット時代に還ってきた

一冊目。すでに一度言及したけれど、倉谷直臣『英会話上達法』講談社現代新書、1977年(上掲画像は参考写真です)。上達法といいつつ、倉谷さんのアメリカ生活を中心に英語にまつわるいろいろなエピソードを英語のフレーズをまじえつつ紹介していくエッセイ風の本。id:uumin3 さんもお勧め。笑いのテイストが関西風なので、そこは人を選ぶかも知れないが、良書である。どんな調子かは、「uumin3の日記」に、ニパラグラフほど大きな引用があるので、そちらもみられたし。なおこの本自体はどうも絶版のようで、その後出た『新・英会話上達法』(上掲)のほうが手に入りやすいかもしれない。ただし私自身は新しい本はまだみていない。ところで倉谷直臣さんはブログをやっておられたのですね。知らなかった。ブログの内容が新しい本の中身で、ブログ自体は書籍との重複を避けるためか、現在ほぼ閉鎖されているようである。

日本人の英語 (岩波新書)

日本人の英語 (岩波新書)

二冊目。マーク・ピーターセン『日本人の英語』、岩波新書。ベストセラーなのでご存知の方も多いと思われるが、タイトルどおり日本人がはまりそうな間違いについて的確に指摘した上で、改良案を提示しており、これも良書である。本のあとのほうになると、ライティングそれも理系の論文作成よりの話になっていくが、前半の冠詞の使い方("I ate a chicken last night." にネイティブが思い浮かべるのは、あなたが血まみれの鶏を一羽口にくわえて夜の庭に立っている光景であるとか*1などは会話力を鍛えたい人にも参考になると思う。名著!「日本人の英語」: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」で主に前半部の内容が引用を交えつつ詳しく紹介されている。それによると大学人の評価も高いようだ。なお続編に『続・日本人の英語』があるが、これにはやや散漫な印象を受けた。悪書というわけではないので、余裕のある方は手にとってみるとよいと思う。

Person to Person: Student Book 1: Communicative Speaking And Listening Skills

Person to Person: Student Book 1: Communicative Speaking And Listening Skills

  • 作者: Jack C. Richards,David Bycina,Ingrid Wisniewska,Ingrid Wisnieska
  • 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr
  • 発売日: 2005/08/04
  • メディア: ペーパーバック
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三冊目は先日ご紹介した Oxford University PressPerson to Person. わたしが使ったときから版が変わっているが、改訂増補といったところだろう。語学の教科書観が完全に変わった本。文法事項をここまで載せなくても大丈夫なのか、と驚いた。本来は先生について習うための教科書だが、根気のある人なら独習で文型練習などしてみるのもいいかと思う。

英語の語源 (講談社現代新書 480)

英語の語源 (講談社現代新書 480)

四冊目。渡部昇一『英語の語源』講談社現代新書、1977年。渡部氏の本としてはかなり初期のもの。小学生くらいで読んだ覚えがある。当時、古英語や中英語について触れた一般書はあまりなかったので、私が古英語について最初に知ったのはこの本だったと思う。ルーン文字のBみたいなのは白樺をあらわしていて、乳房の象形化であり、白樺=白い=おっぱいという連想があるのだというような話が淡々と続く本で、いまからすると話題の選び方がオヤジくさいなあと思うのだが、なにしろ小学生なのでそんなことを思うよしもなかった。氏の個人的経験を交えながら、ノルマン=フランス語の影響を受ける前の英語の基礎語彙のいくつかを、語根から解説する手堅い構成となっている。わたしがこの本から感じたのは、ゲルマニアの暗い森のなかをところどころ切り開いて住んでいる古代の人々が家畜を飼い家族を養いながら生きていた世界が英語という言葉の古層に凝集しているのだということだった。このときすでに渡部氏は青年誌等で説教めいたエッセイなどをものしておられたようだが、後年歴史修正主義陣営を担う人になるとは、幼いわたしには想像だに付かなかった。

五冊目には、村松増美『[asin:4377403966:title]』、1978年をいれておく。

村松氏が英語の全然出来ない状態でアメリカの占領軍のタイピストとなり、日本でも有数の同時通訳者になっていく過程が、さまざまなエピソードを交えて語られている。これも最初に紹介した倉谷本と同じく、教科書というよりは英語にまつわる軽妙なエッセイとして気軽に読めるかと思う。しかしアマゾンのデータからするともっとも版の新しい文庫版(上掲)も絶版なのですかね。まあブックオフに落ちていたら幸運ということか。

英語に関する本はもちろんまだまだ沢山ある。また英語に関する本以外でなく、言語一般や他の言語についての本も、自分の英語観には影響しているだろうと思う。とはいえここでは自分がもっとも楽しく読めた、かつ記憶に残っている本をご紹介した。みなさんからもお勧めの英語の本を伺いたいなと思っていますので、ご紹介をいただければ幸いです。

7:03 追記:さっそくブックマークいただきありがとうございます。id:sentaro0525さんのコメントで、ひとつ忘れていた本を思い出しました。

なんで英語やるの? (文春文庫 な 3-1)

なんで英語やるの? (文春文庫 な 3-1)

このブログで書いたこととは違う主張(例えば「正しい発音」についての記述など)をなさっている箇所もある書ですが、それにも関わらず、倉谷さんの『英会話上達法』と並んで、英語での表現ということを私が考える際の出発点になっている本です。この本は一度は手に取ってほしい。とくに英語教育に今後携わる方には、ぜひ読んで欲しい。古い本ですけれど仄聞するところからして、日本の学校での英語教育が、この書から学ぶものはまだまだ多いのではないかと思います。そしてなにより、この本に充満している、生徒が英語を使えるように、英語でコミュニケートできるように、そのための英語を教えたいという熱意を、みなさんにも感じてほしいと思います。

追記2
辞書・文法書篇を書いてみました。いただいたTBへのお返事でもあります。英語の辞書の憂鬱 - 鰤端末鉄野菜 Brittys Wake

関連エントリ

一日一チベットリンクhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081203-00000011-rcdc-cn

*1:15:48追記。ここは「スゴ本」ブログさんによると記憶がねじまがっていることが分かった。鶏一匹まるごとたべちゃったイメージなのはそうなのだが。