重訳の二字―翻訳エンジン frengly.com と Google Translation

以前に紹介した http://frengly.com/、わりと判別率の高そうなソース側言語自動判別装置があるのが魅力なのだが、必ずしもお勧めできない点もあるので指摘しておく。

frengly.com は「きみ」と「あなた」を区別できない。一部の印欧語には二人称に親称と敬称の区別があり、相手との関係に応じて使い分けをする。どうも翻訳対象をウェブサイト―それも商用のウェブサイト―と決めうちしているのか、敬語っぽく訳そうとする傾向があるようだ。生成される翻訳の二人称が、原文と関わりなく敬称になる。たとえばドイツ語からフランス語に翻訳させると du が vous になってでてくる。このことは別のエントリブックマークコメントで教えていただいたロシア語の二人称を frengly.com に食わせてみて気づいた。おそらくこれらの翻訳エンジンの非英語同士の翻訳が英語を介した重訳であるために、原文と翻訳先の両方にはある親称と敬称の区別が英語を通った段階で消えてしまうのであろう。クリスマスカードに使うにはちょっと地雷が埋めてありそうな気がする……(親称と敬称の区別は相手によって固定される。場面によってではない。なので不適切な使い方をすると誤ったメタメッセージを送ってしまいかねない)。

なおこの欠点は Google Translation http://translate.google.co.jp にも共通する。生成される文章が比較的近い翻訳の癖をもっており、ときに完全一致するので、使っている自動翻訳エンジンのアルゴリズムが似ているのかもしれない。

いっぽう http://www.online-translator.com という最近見つけた翻訳エンジンは、この二つをきちんと区別する。最近スペイン語からの翻訳をいくつかやらせてみたが、比較的読める翻訳になっているのではないかと思った。ただ残念なことに現在は日本語をサポートしていない。また frengly.com のような自動判別機能がない。

翻訳エンジンは一長一短あるので、適度に使い分けしていくのがいいんだなと改めて思った。

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