英語の辞書の憂鬱

タイトルはホッテントリメーカー

英語って結構いやかなり面白そうじゃね、と日本語の本を読んで思った*1ところで、30年前の私はNHKの基礎英語を聴き始めたのですが、いまの基礎英語はだいぶ編成が違うようなので、おすすめしていいのかどうか分からない。そもそもこれを今読んでおられる読者諸兄は、もうちょっと英語が出来るんじゃないかという気がする。

実際に英語を使っていくうえで必要なのは文法書と辞書。今日はその辺を少しご紹介する。

英語を学習していく過程で必要な教科書と文法書は少し違う。前者は日本語で書かれたものは中学高校の教科書くらいしかまとまったものは私はみていないので詳しくない。上で書いたように私はNHKラジオ講座で英語を覚え*2、中学以降は並行して公立学校で普通に授業を受け、高校に入ってからは加えて受験用に通っていた塾で板書を取りつつ英文法を学んだので、それについて日本語で書かれた書籍をご紹介することは出来ない。英語の教科書でいいなら Person to Person (asin:0194302121) がいいと思うがこれはもちろん文法はほとんど載っていないのでそのつもりで見てください。

Collins Cobuild English Grammar

Collins Cobuild English Grammar

id:wiseler さんが自分の英語体験を語っておられて、そのコメント欄でも少し触れたのだが、文法でいまお勧めなのは Collins Cobuild English Grammar. この本が素晴らしいのは、生きた実際の英語表現に根ざした文法書であるということにある。BBC の放送コンテンツに基づいたコーパスを元にしており、例文はすべてコーパスから取られている。つまり、すべての例文は(書かれたものでなく)実際の発話に基づいている。英語を多少なりとも扱うなら、家に一冊は欲しい。
学習者向けのバージョン Collins COBUILD Basic Grammar: Self-study Edition with Answers (Collins CoBUILD Grammar)もあるようなので*3、英語慣れしていない方はそちらのほうが最初はよいかもしれない。子ども用楽器と同じで、辞書と文法書は自分の学習段階にあった(自分のレベルかまたはひとつだけ上の)ものを使うのが一番である。なお Cobuild からは辞書も出ているが、わたしは使ったことはない。

LDOCE (4E/UP) W/WRITING ASSIST : PAPER+ROM(2) QT7 (Longman Dictionary of Contemporary English)

LDOCE (4E/UP) W/WRITING ASSIST : PAPER+ROM(2) QT7 (Longman Dictionary of Contemporary English)

id:p_wiz さんが紹介しているロングマン現代英英辞典、通称 LDOCE *4は、辞書の説明部分が基本2000語のみで書かれている英語学習者向けの辞書である。http://www.ldoceonline.com/ でオンライン版が無料で提供されている。ブックマークレットを使うと、さらに簡便に使用できる。ただ、誰にでも勧められるかは正直疑問で、http://www.linkage-club.co.jp/中学英語教科書 最重要単語リストによれば、中学英語ではだいたい2000語強が導入されるがそのうち過半数の教科書に載っている基本語彙は845語だそうである。そのレベルの人、たとえば高校に入ったばかりの人などが LDOCE を使うのはちょっとつらいんじゃないかとおもう*5

そこで橋渡しとしておすすめなのが名和雄二郎『ロングマン エルドス2000活用英単語』、桐原書店 (asin:4342100207)なのだが、どうもこれ1993年に新装版が出たあと版切れしているらしい。書名の通り、LDOCE の2000語を LDOCE から抽出して、カテゴリごとに配列し、語義説明部分を英語と日本語の対訳にしたいわば英英和簡易辞書である。古本屋でみつけたら即購入をおすすめする。

私自身は家にたまたま『新英英大辞典』 asin:4758900825 通称 ISED があったので、それも使っていた。こちらの改訂版が Oxford Advanced Learner's Dictionary (OALD, asin:0194001164) だというのはあとで知った。ISED はビニール装で小型で持ち歩きやすく、大学へ持っていくときなど重宝した一方、読みやすさということでは LDOCE のほうがよいなと感じた。おそらく用例取材などのコーパスの性質の違いなのだろう。そして辞書は出来るだけ新しいものがよいという鉄則に照らして、ISED をいまから買うくらいなら OALD (7ed, 2007) にしておけとも思う。

新グローバル英和辞典

新グローバル英和辞典

英和も紹介しておくと、高校・大学時代はもっぱら三省堂の『グローバル英和辞典』を使っていた。「連結欄」というのが特色で日本で始めてコロケーション(この名詞はこの動詞と結びつくなど)を本格的に取り入れた辞書だったと思う。コロケーションの知識なしに正しい英作文や発話などできはしないので、英作文を多くする機会のある方には特にお勧めである。大学時代、ある演習中、高山宏先生が「あのコロケーションの記載はすごい。どうやって作ったんだろうって驚くよね」と触れておられたが、なんでもカードでコロケーションを収集・分類したらしいですね。昔の学者の仕事というのはおそろしいものです。なお私がもっていない新版では、編者が変わっているらしいが、「連結欄」は健在のようだ。

研究社の辞書にも御世話になった。『現代英和辞書』『リーダース英和辞書』ときて、しかしこれがもう15年前のものなのかな。最近は英和はほとんど自分では買いませんで、goo 辞書のお世話になっております。

なお p_wiz さんは「そんな事より英単語覚えようぜ」とおっしゃるのだが、学習理論によると、自分が学習しようとする対象について概略的な理解をもっているほうが学習効果があがる、ということを聞いたことがある。なので英語教育やあるいは英語という言語そのものの性質について、ある程度知識をもっていたほうが良いと私は考える。これはid:ktdiskさんが30歳からのビジネス英語 英会話学校に通うなんてやめなさい - Thoughts and Notes from NCでいう「実践だけでなく、座学も」ということと通じると思う。

関連エントリ:

一日一チベットリンクhttp://www.47news.jp/CN/200812/CN2008120401000936.html共同通信、12月4日。

*1:いや一冊は英語の本で、がちんこに教科書ですが。

*2:中学生のときには『続基礎英語』を聴いていた。マーシャ・クラッカワーさんでなくなっていたのが少し残念だったが、その頃より若干易しめになっていたので、わたしでも付いていけた。

*3:私は未見である。

*4:私は LDCE と書いてきたが出版社は LDOCE という表記を使っている

*5:逆に慣れてくれば、高校生でも十分 LDOCE は使える。Oxford Advanced Learners' Dictionary 通称 OALD はもうちょっと英語力が必要か。